IT再考-遊び心(続き)
前回、ある中小企業の若手経営者の話をしましたが、今回は先日見た「カンブリア宮殿」で取り上げられていた大垣共立銀行の話をします。同じようにそこの頭取が「遊び心」という表現をしたからです。ただ、ITとは若干離れるのですが、相通じるものは多くあります。
ここの地方銀行は、今年1月に発表された「日経金融機関ランキング2010」の顧客満足度調査で3位にランクされています。上位2行はネットバンキングなのでリアルの店舗をもつ銀行ではトップという快挙です。そして顧客満足度がちゃんと営業成績につながっていて、10年で預金高が1兆円増えてのだという。なぜそうなったかがすごいのである。
ここの土屋頭取というのは1993年に46歳の若さでこの地位についてから、様々な改革や新たなサービスを展開したのである。まず、徹底したのが「銀行は金融業ではなく、サービス業である」ということである。だから、動きの悪い行員に“おまえは銀行員か”といって諭すのである。
そしてユニークなサービスを仕掛ける。ATMでお金を出し入れするとスロットマシンになるんですよ。そこで当たりが出ると手数料がタダになる。何という「遊び心」だろう。それとか、公共料金を払うとポイントがたまるのである。主婦はポイントに弱いからすぐに行きそうですよね。
なるほどと唸ったのは、ドライブスルーATMだ。ドライブスルーで車が着くとATM機が運転手席の位置に合わせて動いて、そこで入出金や振込、記帳ができるのだ。これって便利ですよね。テレビでは、赤ちゃんをチャイルドシートに乗せたお母さんがインタビューに答えていたが、いちいち子どもを下ろしてベビーカーに乗せ換え、ATMで並んで操作することから較べて格段に楽になったと言っていたがまさに行き届いたサービスではありませんか。
さらに、コンビニ仕様の支店まで作ってしまった。なぜそんなことをしたかというとあるとき銀行でお金を下ろした人が隣のコンビニで公共料金を払っていたのを銀行員が見て衝撃を受けたというところから発想したのだという。これではコンビニに負けてしまうというものすごい危機感をもったのだが、自らがコンビニのような店舗にするという手を打ったのである
制服もコンビニ風で銀行では危険だからということで御法度であるトイレも設置、コーヒー無料サービス、雑誌立ち読み自由という。(住宅雑誌の下にさりげなくローンのパンフレットを置いておく)だから子どもまでやってくる。それでいいのだという。ずいぶんと銀行のイメージが変わったものだ。顧客目線でサービス提供という考え方である。
こうした発想ができるのは、ひとつには異業種企業での研修の効果が大きい。従業員は1年から1.5年、銀行とは全く違う業種の会社へ研修にやらされる。この長い期間の研修というのが意味があって、1カ月とかの研修はよくやられるのだが、これだけの長さだと受け入れる企業も本気度を感じるし、表面上のことだけではなく裏のことまでも学べるという。
ITとは直接関係するような話はほとんどないが、多くの示唆的な内容を含んでいる。まずは「遊び心」が大切ですよということ、異業種に学ぶ「越境の精神」、それと既存にあるサービスの転用あるいは組合せで新たなサービスを創造する「組合せ型サービス」といったことはどんな業界でもあてはまるのではないでしょうか。アップルのビジネスなんてある意味この通りですよね。
こうしたことは頭取一人のトップダウンでできたわけではなく、行員の意識改革という面が非常に大きいのは言うまでもない。重要なのは、トップが「銀行はサービス業である」という明確なメッセージを発したことで求心力も増したのだと思う。IT業界でもSIerはサービス業であると言っている会社もあるようだが、大垣共立銀行のように実行が伴わなかったら何もならないことを肝に銘じる必要があると思う。






