こういう映画は好きです。観ていて楽しいからです。波長が合う感じでノッテいけます。東直己原作、橋本一監督の「探偵はBARにいる」はそんな作品である。映画は原作そのままではなく、下敷きにしているので、縛りがなくて古沢良太、須藤泰司の脚本が冴えている。主演は探偵に大泉洋、その助手のアルバイトの高田が松田龍平でこのコンビもいい感じである。
こんなノリのいい映画も久しぶりだ。しかもところどころにしびれるネタをちりばめている。地下のバーの寡黙なバーテンダー、探偵の飲む酒がフィリップ・マーロウばりのギムレット、助手の高田が飲むのがバーボンソーダ(今はハイボールといっているが、ぼくはずっと前からバーボンソーダがお気に入りである)だ。たばこは両切りの缶ピーだ。茶店(さてん)のナポリタンと色気丸出し女、オセロとゲーム機などなど。更に、カルメン・マキ本人が登場して「時計を止めて」を唄う。こういうディテールやルーティンに凝るのは好きだな。
探偵は、「ケラー・オオハタ」というすすきののバーを事務所代わりにして、そこに電話がかかってきて仕事を受ける。事務所もない、携帯電話も持たない、車も運転できない(だから高田を運転手としても使っている)という変わった探偵であるが、時代遅れのカッコよさなのである。
そんな探偵にあるとき「コンドウキョウコ」と名乗る女性から電話がある。「ミナミという弁護士に、去年の2月5日カトウはどこにいたか?」と聞いてくれという依頼であった。そこから、だんだんと事件の匂いの中に引きずり込まれていく。最初にその筋のひとに連れ去られ、雪の中に埋められてしまう。
さあ、そこから謎解きとアクションと駆け引きが展開するのだが、登場人物の個性も面白い。謎の女沙織(小雪)、花岡組のヤクザ(高島政伸)、北海道日報新聞記者(田口トモロヲ)、桐原組幹部(松重豊)、銀漢興産会長(石橋蓮司)などばっちりと存在感がある。特に驚いたのは、あのヤマダ電機のお兄さん高島政伸の悪役ぶりで、いい人キャラが悪党になるとハマることがあるが、まさにその通りでびっくりした。
おそらく、この映画はシリーズ化すると思うが、まあまあの人気を博するのではないだろうか。主人公となる二人のキャラクター設定がうまくいっているのと拠点が北海道というのもいい。ただ、その周りにも少し面白い人物を配置したほうがいい。
バーのマスター、喫茶店の看板娘、キャバレーの客引きとか新聞記者がいるのだが、それほど絡んではこないので、ぼくなら、もう一人の助手となる可愛い女の子を持ってくるけどな。その候補は本作で写真で出てきた眼鏡美女の吉高由里子である。ぜひ、加わってほしいものだ。
観終わったあと、いつものBAR「M」に行く。バーテンのKちゃんが黙っていてもバーボンソーダを作ってくれる。タバコは吸わないけどカウンターに肘を立て、「おれに電話なかったかい?」と言ってみた。Kちゃんは、探偵が電話で仕事できる店ってよっぽど空いているんだね。うちみたいな店だと秘密が筒抜けになると言った。それもそうだ。

