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不思議前提とIT ― 「ターゲットにモノを売る」というまちがい

以前「「応援したくなる企業」の時代」(博報堂ブランドデザイン著 アスキー新書)という本を紹介したとき、その中にある7つの不思議前提というものを見直すことが重要だというようなことを書いた。その7つの不思議前提というのは再掲すると、

・ 「ターゲットにモノを売る」というまちがい
・ 「差別化のポイントはどこ?」という不見識
・ 「ニーズはなんだ?」と問うあやまち
・ 「勘でものをいうな」がもたらす損失
・ 「どんなアウトプットが得られるんだ?」と問う不利益
・ 「下から意見が出ない」という勘ちがい
・ 「仕事にプライベートをもち込むな」という非常識

であるが、それぞれについてIT業界絡みで考えてみようと思う。

まずは、「ターゲットにモノを売る」というまちがいについてである。本の著者は「ターゲットを攻略する」という言い方からもわかるように軍事用語であり、攻撃的なニュアンスがある。しかし、こうした“買わせる”“売りつける”でいいのだろうかということである。

ITももちろん例外ではなくて、普通にマーケティングの一環としてターゲットを設定する。ターゲットは大企業にするのか、中小企業向けなのかとか、2000年問題だとか内部統制だとかいったエポックがあると一斉にそれめがけて売り込む。

そんな時の言い分は、顧客志向であり、消費者目線である。しかし、その前に送り手発想と受け手発想という二項対立概念を踏襲したままでは意味はなく、単に視点を変えただけになってしまう。つまり、いつまでたっても作る人と使う人という区分けの中で、使う人の要求を聞いて、作る人が要件定義するというやり方では、二項対立概念を引きずったままだと思うのである。

この本では、それを解決するには、「ターゲット発想」から「コミュニティ発想」へ転換せよと提言している。システムを作る人と使う人が一体となって、ビジネスの成功めがけて協力し合う姿が浮かぶ。しかしながら、非常に難しいのも確かだ。どうしても収益モデルが書けないから、既成のベンダーやSIerでは無理なので、新しいプレーヤーが出てこないとできないかもしれない。

ただ、希望はWebの世界が、技術的なものもさることながら、その精神の部分でもかなりエンタープライズに入り込んできたこと、そして、クラウドのインパクトである。以前、ユーザにとってはクラウドにあまり積極的なメリットを見いだせないと指摘したが、このコミュニティ発想を後押しする環境という意味では可能性を感じる。
 

「応援したくなる企業」の時代 マーケティングが通じなくなった生活者とどうつき合うか (アスキー新書)
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コメント (1)

松井保憲:

和田さん。いつも面白い演題でブログ感謝します。今回のブログで

・・・・・中略

そんな時の言い分は、顧客志向であり、消費者目線である。しかし、その前に送り手発想と受け手発想という二項対立概念を踏襲したままでは意味はなく、単に視点を変えただけになってしまう。つまり、いつまでたっても作る人と使う人という区分けの中で、使う人の要求を聞いて、作る人が要件定義するというやり方では、二項対立概念を引きずったままだと思うのである。

この本では、それを解決するには、「ターゲット発想」から「コミュニティ発想」へ転換せよと提言している。システムを作る人と使う人が一体となって、ビジネスの成功めがけて協力し合う姿が浮かぶ。しかしながら、非常に難しいのも確かだ。どうしても収益モデルが書けないから、既成のベンダーやSIerでは無理なので、新しいプレーヤーが出てこないとできないかもしれない。
・・・・・・中略

この部分が、実はBPMを適用するときの、どのように自分たちの業務プロセスを見えるようにするかというところに当てはまるように思います。常にユーザ(業務担当者)と開発者(情シ部門やITベンダー)の視点が抜けきれませんね?両者でコミュニティを築く発想にならなければなかなか業務の見る化は難しいですね?
そうですコミュニティの発想をどのような形で実現するかこれから十分に考えていかなければ、日本の情報システムは基幹系中心から抜け出されないかも・・・・・・

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2011年9月29日 10:07に投稿されたエントリーのページです。

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