先月に発表されたアカデミー賞の作品賞は「英国王のスピーチ」であるが、前年の作品賞は「ハートロッカー」であった。監督のキャスリン・ビグローは監督賞も同時に受賞している。日本ではそんなに評判にはならなかったと思うが、アバターなどを尻目に受賞した。
この作品は、イラク戦争における爆発物処理班の兵士を主人公に据えたアクション映画でもあり、爆発と背中合わせなのでスリルとサスペンスでもある。前任者が爆死してしまったあとの中隊にジェームズという名の二等軍曹が配属されてくる。この男は非常にクールでそして勇気があるのだが、独特の行動なので、こう言うやつに限って仲間とはうまくいかない。
映画は、この爆弾処理の風景を中心に進むのだが、だからどちらかというとドキュメンタリーをみているかのような気になる。そして、節目になると「除隊まで○○日」というテロップが流れる。最初は抑揚がないので眠くなるくらいだ。
しかしこの作品の真骨頂はラストのところだとぼくは思う。ジェームズ二等軍曹は晴れて除隊となって、アメリカの妻と子どもが待つ家に戻るのだが、そこには彼を迎え入れるような空気が薄くなっていることに気づく。そして、彼は自分の居場所は戦場であるかのようにまたイラクに戻るのであった。
これを描くために爆弾処理という作業を乾いた感じで撮り続け、そこにある危険と隣り合わせに身を置くことでやっと自己を保てている人間がいるということを焼きつかせる演出は見事だと思う。このことは、戦争を身近に感じていない平和な日本人には到底わからないことかもしれない。
