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2011年2月 アーカイブ

2011年2月 9日

冷たい熱帯魚

これはすさまじい映画である。あの「愛のむきだし」の園子温監督の「冷たい熱帯魚」は、もうずいぶん前に埼玉県で起きた愛犬家殺人事件を題材にしたもので、猟奇的な事件として注目されたのを記憶している人もいると思うが、この映画でも気持ち悪くなるくらい衝撃的だ。

実際の事件では、ペットショップを営む夫婦がトラブルが発生した顧客を次々に殺した事件なのだが、死体をバラバラにして焼却して遺棄したため、遺体なき殺人と言われた。映画では、犯人の職業がドッグブリーダーから熱帯魚店主に変えているが、あらかたは似た展開になっている。

なので、死体を風呂場でバラバラにするシーンが出てくる。これがもう反吐が出そうなくらいグロテスクなのである。そして、そんな残酷シーンでも驚くなかれ笑いをとる言動が差しこまれているのである。そして、もっとびっくりしたのはそんなシーンの最中に笑う観客がいるのである。ぼくには、到底笑う気にはなれないのに大きな笑い声が一部から聞こえたときには、そっちの方がなぜか気持ち悪かった。

もう、そんなことだから気持ち悪さをずっと引きずって観ていたのだが、それ以外は、おもしろいというか、考えさせられる。要するに、非常に突出した行動や心理ではあるが、それは本質的な問いでもあるということである。

殺人鬼の夫婦である村田とその妻愛子にでんでんと黒沢あすか、その夫婦に脅迫されながら共犯者に引き込まれていく同じ熱帯魚店主の社本に吹越満が扮しているが、それぞれが渾身の演技で見応えがある。とくにでんでんの悪役はいつも人のいい役ばかりなので、意外なのだが、そのためかえって不気味さが倍加され出色である。

人間というのは、表面的ではないところで、この村田的な部分と社本的な部分を併せ持っていて、それが極限のところで表面化し、それがもう後戻りできず、どんどん泥沼にはまっていってしまうのだ。そのどうしようも堕ちかたが、センセーショナルな場面としてこれでもかと投げかけられると、これは特異なことだという思いが徐々にみんなが同じように持っているものなのかと砕かれてしまう。

だが、救いはないのだろうか。最後のシーンでも驚かされるのだが、やっぱりぼくには一縷でもいいから希望のようなものがほしい気がするのだ。それにしても、すさまじい映画である。

一緒に観た映画友だちのS君と、見終わったあと新宿の居酒屋で、こんな話をした。もちろん、レバ刺しと唐揚げは食べなかった。

2011年2月12日

ゴールデンスランバー

おなじみ、伊坂幸太郎と中村義洋監督のコンビの映画「ゴールデンスランバー」を観る。「アヒル鴨のコインロッカー」、「フィッシュストーリー」に続く3作目で、原作は、本屋大賞にも選ばれたベストセラーである。このコンビは、こうだとはっきり言えないが雰囲気が合っているような気がする。

映画は、仙台で時の首相がパレード中に車が爆破され暗殺されるという事件が起こるが、その犯人に仕立て上げられた青年が逃げ惑う様を描いている。それは、学生時代のサークルの友人が事件直前に示唆されていて、友人は自分の車も爆破されて死んでしまう。そこから、なぜか大きな権力に追われていく。

こう書くと、推理とサスペンス風の匂いがするが、映画はそうではない。学生時代の仲間の物語である。自分が知らないうちに暗殺の犯人にされたのも、学生仲間の借金が原因で脅されていたからでもあるが、その友人がぎりぎりで逃がしてくれたり、その後の逃亡もそうした友だちたちの助けを得てできたのである。

この大きな首相暗殺物語と学生時代の仲間との変わらぬ友情物語という大きな物語と小さな物語が併行して走るのだが、この小さな物語が核になっている。伊坂ワールドは、ある意味荒唐無稽な設定があるのだが、実は中心的主題が狭い人間関係だったりするのだが、これもそうだ。

この青春の仲間たちに、堺雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとりが扮していて、堺と竹内が学生時代に恋人同士であって、その恋人になるときと別れのシーンがあるのだが、彼らがバイトで花火の打ち上げをやっていたとき、そこで結びついたことや、あるときふと堺がチョコレートを割って竹内に渡すとき、きちんと半分に割ってくれたときのことを、そんな小さくまとまるなと思ったとか言って別れを切りだすところなんかまさに日常的な小さな物語である。

とはいえ、謎解きの部分や彼を助ける人々の行動などユーモアも入れ込まれてとても楽しい映画である。こうみるとやはり伊坂幸太郎の作品は映画的なのだと思う。きっとこれからも多くの作品が映画化されていくのだろう。

2011年2月19日

時をかける少女

原作が筒井康隆で、アニメも含めて何と4度目の映画化だそうだ。「時をかける少女」は、それだけ人気のあるストーリーだということなのだろうか。ただ、まったく同じ筋書きというわけではない。

この昨年封切りされた谷口晃監督の作品は、原作と違って主人公が芳山和子からその娘あかり(仲里依紗)というふうに変わっている。しかし、未来から過去、現在から過去へワープしてしまう(医がでは、タイム・リープという)ことは変わらない。こうした設定がおもしろいのだろう。

ここでタイム・リープするのが、1974年(本当は1972年に行くはずが間違って1974年なってしまった)なので、映画のストーリーがどうのというより、その時代をなつかしく思いだしてしまった。だって、ぼくが、26歳の時だから、ほぼ似たような時代感覚なのである。

しかも、タイム・リープしたあかりがころがりこむ中尾明慶扮する涼太は、映画青年で自ら8ミリ映画を撮っているという設定である。ぼくもこのころ8ミリカメラを持って、映画監督気取りで大したシーンではないが撮ったりしていた。そして編集機でフィルムを切り、継ぎしながら遊んだものだった。

そして、神田川の世界である。だからこうした思い出でもうジーンときてしまう。そんな見方で評価した人もいたのではないだろうか。こうしたことができるのは、ちょうどぼくらの年齢の人たちである。ということは、また何年か後に例えば1980年にタイム・リープする作品を作ればまた受けるのではないだろうか。一粒で何度でもおいしいのだ。

2011年2月26日

蛇のひと

第2回WOWOWシナリオ大賞を受賞した三好晶子の脚本を森淳一が監督した映画が「蛇のひと」である。シナリオの賞というとぼくらの年代だと「城戸賞」を思い浮かべる。昭和49年から始まったもので、印象的な作品は中岡京平の「夏の栄光」が最初の入選作で、これが「帰らざる日々」という題名で藤田敏八ヶ監督した。同時に入賞したのが大森一樹の「オレンジロード急行」である。なんだか懐かしい。

城戸賞はかなり壁が高く、映画化も難しい。一方でWOWOWの方は映像化を前提なので大賞を受賞すればドラマ化されるようだ。「蛇のひと」は、ある出来事がきっかけで直属の上司が失踪してしまい、その上司を探しだすOLが主人公のサスペンスドラマ仕立てである。

それを、ぼくの好きな永作博美が演じ、失踪した課長に西島秀俊が扮している。非常に身近にいたはずだから、その課長のことを知っていると思っていたら実は何もしらなかったという現実が徐々にわかってくる。このあたりの導入はなかなかのものである。

そして、彼の知り合いと言われた人びとから聴取していくうちに、非の打ちどころのない完璧な人間像が浮かんでくるが、何かが違うことが少しずつあぶりだされる。結局、彼の生まれ故郷の大阪へ行くころには、その生い立ちが影を落としていることが浮かびあがってくる。

というような展開で、人間は自分の近くにいる人のことをわかっているとようで、その内面的なところにも入り込めていないし、その過去にもたどれない、そんな関係性の中に生きていることを痛感する。ここを永作と西島がそれを熱演していて、おそらく二人の間にいくばくかの恋愛感情があったはずだが、それを近付きそうで離れる間合いをうまく表現していたと思う。

ただ、横溝正史ばりのおどろおどろした世界を持ちこむのがどうかというのと、カットバックを多用しているが、そのシーンがどうも説明的になってしまって、脚注といった趣になっているのが残念であった。


2011年2月28日

東京スポーツ映画大賞

昨日は恒例の東京スポーツ映画大賞の授賞式に出席する。今年は第20回というからずいぶんと長く続いている。今年の会場は、いつもの赤坂プリンスホテルだが、ここが来月一杯で閉館するというので、来年からは別の会場となる。赤プリはぼくらの世代ではけっこうこだわりのあるところで、その名を聞いただけでうずく人も多いのではないだろうか。ロビーには、1955年開業からの年譜が飾ってあった。

さて、授賞式であるが、相変わらずビート・たけしの独断と偏見で選ばれるから、たけしの作品が対象となった年は、たけし作品がメインになる。これは別段目くじらを立てることでもなく、そういう了解のもとで成り立っているからそれはそれでかまわないと思う。

だから、今年の作品賞と監督賞は「アウトレイジ」と北野たけしだし、助演男優賞(石橋蓮司、椎名桔平)と新人賞(北村総一朗)も「アウトレイジ」絡みである。他の受賞者を紹介すると、以下のとおりである。

主演男優賞 :豊川悦司(「必死剣 鳥刺し」、「今度は愛妻家」)
主演女優賞 :仲里衣紗(「時をかける少女」「ゼブラーマン─ゼブラシティの逆襲」)
助演女優賞 :夏川結衣(「孤高のメス」)
外国映画賞 :「第9地区」
特別賞   :阪本順治監督、是枝裕和監督

この映画の審査のやり方は全国各地の映画祭がノミネートしたものの中からたけしがそれこそ独断と偏見で選ぶという方式で、ぼくは映画友だちのS君とともにいちおう「三重映画フェスティバル」の東京支部のメンバーということにしてもらっていて、自分でもノミネート作品を提示している。

昨年は、ほとんどがぼくらの推薦したものと変わりなかったのだが、今年は豊川悦司と石橋蓮司だけで、あとは予想外である。というのもたけしはおそらくろくに映画を観ていないはずで、明らかに観たと言っていた「第9地区」でも飛行機のなかで観たと言っていたくらいだ。

冒頭たけしが言っていた中で印象的だったのが、最近はまともな映画記者がいないということで、それこそ沢尻エリカを追いかけている芸能局のヤツがインタビューにくると嘆いていた。そんなレベルなのでちゃんとした映画評論も書けないということだ。

それと、たぶん各地の映画祭が「アウトレイジ」を推さなかったからかもしれないが、映画祭といったって本当に活動しているのかと皮肉っていてちょいとドキッとした。とは言え、監督賞は圧倒的に北野たけしに票が入ったと言っていた。本当だろうか。

受賞者について、ひとことづつ。北村総一朗は75歳の新人賞ということで驚いたそうだが、悪役とは反対の役柄ばかりだったので、そういう意味での新人賞だとのことである。トヨエツは、デビュー2作目がたけし監督作品だったそうで、そのとき監督から言われたのが、「何もしないでいい」ということで、今でも忘れずに心がけているのだという。それにしてもかっこいい。

女性の二人では、夏川結衣についてはあまり語ることがなくて、演技のうまさを冷やかしていた。仲里衣紗は、ぼくらは新人賞ならいざ知らずいきなり主演女優賞をもらったので驚いたが、たけしは、これだけ振れ幅の大きい演技ができるのはたいしたものである、だから先行評価したと賛辞を送っていた。

あと、同時にあった「エンターテインメント大賞」では、ピースとブラックマヨネーズが日本芸能大賞、AKB48が話題賞ということで出席していた。他にノミネートされていた沢尻えりかとかマツコ・デラックスなどが見れるかと思ったが欠席で残念であった。写真を掲載しておきます。遠くからだったのでよく見えませんね。トヨエツ、仲、全員写真です。

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