集団抗争時代劇の傑作と言われた工藤栄一監督のオリジナル作品は、ぼくが高校生の時に封切られたのでもので、壮絶な殺陣シーンが話題になった。それのリメイク版「十三人の刺客」が三池崇史監督によってつくられた。
なんとオリジナルでは13人対53騎で30分の戦いだったのが、13人対300人で50分ということでかなりパワーアップしている。俳優陣も、役所広司、山田孝之、伊勢谷友介、稲垣吾郎、松方弘樹、平幹二郎、松本幸四郎、市村正親、岸部一徳、古田新太といった面々である。
今の時代、なかなか大がかりな時代劇を作れないでいるが、久々のチャンバラがふんだんに出てくる大型時代劇である。あれだけのセットを組んで(二億円くらいかかったそうだ)あれだけの、馬を集めるんだからすごい。それだけでも、少々長くはあったが、ぼくはかなり楽しめた。
物語は説明するまでもなく、時は幕末、将軍の弟でもうすぐ老中になろうかという明石藩主が、傍若無人で残虐を繰り返す振舞いに怒り、危機感を抱いた現老中が暗殺を役所広司演じる島田新左衛門という御目付に暗殺を命じるところから始まる。そして、参勤交代で明石に帰る途中で襲う計画を立てる。
この映画のポイントは、この大名行列の大人数に守られている殿様の首をたったの十三人で奪うという設定である。そのためには、もちろん命を捨てる覚悟でなくてはできないわけで、そこでその命を捨ててもいいという人間を集めるというのがこの島田新左衛門の器量なのである。これって、現代に当てはめると会社の命運を左右するような一大プロジェクトのリーダーみたいなものかもしれない。まあ、命とクビとではずいぶん違うが。
そうした、俺についてこい式の人間ぶりを演じたら評価が高い役所広司がその名のとおりの演技で安定感がある。その一方で出色だったのが、暴君を演じた稲垣吾郎である。SMAPメンバーでありながら汚れ役を見事に演じていたのには驚いた。
この二人は、単純には真逆の人物に見えるのだが、ぼくにはなぜか似ているように思えたのだ。その時代、すなわち長きに渡って君臨する徳川の政事に対する閉塞感を同じように感じているのである。例えば、山田孝之演じる島田新左衛門の甥もそんな鬱屈した気分を博打に吐き出したりする。そして、人も斬ったこともない侍ばかりで、武士とは戦とはどこに行ってしまったのかという思いもある。
明石藩主はそれがひどくエキセントリックで猟奇的な方向に走ってしまうのだが、この攻防を楽しむようなニヤッと笑う表情が秀逸で、もう徳川時代の末期症状の象徴として描いている演出はよかった。だから、討った13人にしても暴君を斬るだけではない目的をそれぞれに抱えていたようにも思える。「侍など、ほんとうにやっかいなもの」なのかもしれない。
戦闘シーンもすごかったが、いま言ったようにぼくにはこの幕末の時代の匂いが印象的であった。
