Webを支える技術は、HTTP、URI、HTML、そしてRESTということを書いた。このおかげでシンプルで拡張性に優れたWebサービスが作られるようになった。ではこうした技術が企業において、あるいはビジネスの世界においてどんな恩恵をもたらしてくれているのだろうか。
こう書くと、それはEnterprise2.0のことですねという人がいる。数年前に言われていた概念で今はどうなっているのか知らないが、要するにメッセージングやSNS、ブログ、wiki、コラボレーションツールなどのWebの技術をビジネスに生かそうという試みである。
まあ、だいたいにおいてナレジマネジメントと似たようなニュアンスで語られる。個人の知的生産性の向上といった響きだ。だから、グループウエアの拡張みたいな使われ方になる。しかし、そんな使われ方がはたして正しいのだろうか。どうも違うように思うのである。
そんな時は、技術そのものが持つ特徴を生かすにはといった視点が必要なのではないだろうか。私的な世界ではやっているからそれを企業にも持ち込もうというのはいささか短絡的のような気がする。家でやっているように会社でもやりたいというのは、電車の中で化粧するようなもので、そんなことは企業では望んでいない。
では、そのWebのもつ特徴、言いかえれば、従来できなかったものができるようになったことは何なのだろうか。ぼくは次の3つのことを挙げることにしている。
それぞれを詳しく説明する必要はないと思うが、システム上でお互いに会話できること、自分の好きな時に情報を取りに行けること、そして多くのテキスト、画像、音声などにリンクで簡単にアクセスできることである。
この恩恵をまだ企業の業務システムで生かせていないと思う。ここで業務システムと言ったのは、いくらグループウエアみたいなところで言ったところで個人のリテラシーの差があったり、効果が表れにくかったりするわけで、そうではなくて誰もが日常的にやらなくてはいけない領域に持ち込むことが大事だと思うからである。
再三言っているように、企業の組織活動の基本は意思決定の連鎖であるから、その意思決定のスピードと質を高めることが大きなミッションであるはずで、そのためには、情報収集能力と判断力の向上、協働による集合知の活用、必要な時の俊敏な動きなどなど、先に言ったWebの持つ恩恵を享受できることが少なからずあると思うのである。
