CIROっていったい何のこと?というは一般的な疑問であろう。 Cabinet Intelligence and Research Officeの略で、日本語では内閣情報調査室のことである。そのことを本にしたのが、「CIRO(サイロ) 内閣情報調査室 香月喬」(浜田文人著 朝日文庫)である。
これは、もちろんCIROの解説本ではなく、CIROで働く香月喬という調査官を主人公とした小説である。浜田さんは、前にも言ったが、ぼくがよくいく店の常連で、ときどき顔をあわせる人で、「捌き屋」や「公安捜査」のシリーズを書いた作家です。
この小説は、テーマが内閣情報調査室なので、現在の政治にまつわる裏の話が随所に出てくる。この政権交代もそうだし、それ以前の自民党の小泉構造改革派とそれに反対する勢力との争いが描かれる。だから、すごく生々しくて、具体的にこれはあの人だなとかいった想像をついしてしまう。
ここらあたりは、あまり本当のことでもいかんだろうし、さりとていかにも作り話でもリアリティに欠けるだろうから難しいところだ。しかし、浜田さんは、豊富な資料と情報からうまく“捌いて”いる。そして、何と言っても、登場人物の人間味を大事にして書いているので、スキャンダラスな読み方ではなく人間ドラマとして読ましてくれる。
ところで、実はこの本にその行きつけの銀座の「M」が、登場するのである。だいぶ後半になってからではあるが、警視庁刑事部の警部補として出てくる別府という人物の行きつけの店がそれである。
ほどよい空間と、神経が凪ぐ仄暗さ。数寄屋通の脇道を入ったところのバー・モンジュールは、一見の客でもやさしく包む雰囲気がある。と紹介されている。確かにいい表現だ。そして、丸顔の女性バーテンダーとマスターも登場する。この間その店でこの話になったとき、バーテンダーのKちゃんは実際にも丸顔なんだけど、わたしのこと丸顔とそれだけしか書いてくれないのに、マスターはすごくカッコよく書かれていていいなあと嘆いていた。
この浜田本は、ハードボイルドなんだけど、繰り返すがそこに出てくる人物がそれぞれに個性があり、情があるので、あったかいクールさとでもいった趣で面白いですよ。
- 浜田 文人
- 文庫 / 朝日新聞出版
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