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ラーメン屋vs.マクドナルド

このタイトルからだと、薄手の比較文化人類学かと思ってしまうが、中身は非常に濃いまっとうな経済論なのである。「ラーメン屋vs.マクドナルド」(竹中正治著 新潮新書)はそんな本である。

著者は、(財)国際通貨研究所経済調査部長・チーフエコノミストであるが、銀行のワシントン事務所長などで経験した日米の差異からその比較を試みている。

表題のラーメン屋とマックの比較は、職人芸として究める日本のラーメン屋とパターン化して大量に作り出すマックを並べているわけで、そのほか、希望を語る大統領vs.危機を語る総理大臣、ディベートするアメリカ人vs.ブログする日本人、「ビル・ゲイツ」vs.「小金持ち父さん」、一神教vs.アミニズム、消費者の選別vs.公平な不平等とくる。

すごくわかりやすでしょ。希望を語る大統領vs.危機を語る総理大臣なんて、いまの党首討論でも100年に一回の危機を強調する日本とオバマの希望を語る姿とずいぶんと違いますね。著者はエコノミストなので、金融と経済における比較がぼくには非常に勉強になった。

日本の金融市場でよく言われるのが、「日本人は文化的にリスクヘッジ回避志向だから」というのがあって、従ってリスク性金融資産比率が低いというのがあるが、ちゃんと調査すると必ずしもそうではないらしい。そうならざるを得ない事情があるという。

1つは、小泉改革での構造改革の対象となった公的金融と郵貯制度の存在をあげている。要するに、日本人は郵貯を選択しているのでどんどん膨張しているが、それはリスクヘッジというより、金融製品としては合理性を欠いた、言い換えれば政府が税がリスクヘッジしてくれるというものがあったら、そちらを選択するほうが合理的だからなのだ。

そうしたことから、家計の資産格差分布がずいぶんと違ってくる。米国は日本に比べて金融資産残高もはるかに格差の大きな分布をしている。簡単に言うと、ビル・ゲイツのような大金持ちがいる米国と小金持ちが多くいる日本というわけである。

そのため、ちょっとした金持ちは貯蓄にいそしむが投資に向かわないのである。逆に言えば、今回の金融危機でも日本の投資家と金融機関の損失が小さかったのはこのせいなのだ。これを変えてほしいのだが、米国と同じようにするのはどうかと思うので日本型の変革を行う必要があるのだろう。

それから面白かったのは、日米比較というより、日本の格差についてである。本当に格差は拡大しているのかと問いかけていて、ちゃんとデータを正確に読むと、同一世代での格差の拡大ではなく、人口構成の老齢化と単身世帯の比率増加によるものだそうだ。

このように、筆者も言っているように、またぼくも何回か書いているのだが、政策論争でもきちんとデータを解析して正しい現状認識から出発した議論にしないと、事実誤認をベースに政策を作ってもしょがないと思うのである。

この本はおおよそ1年前に書かれたものであるが、言っていることは今もそのまま当てはまる。こうした正論をはく人の意見を政治家は勉強するといい。お勧めの一冊である。

ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層 (新潮新書)
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2009年08月15日 10:04に投稿されたエントリーのページです。

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