昨年のカンヌ国際映画祭で「ある視点」部門の審査員賞を受賞した黒沢清監督の「トウキョウソナタ」を観る。この作品では、ばらばらとなった家族がやり直しができるかといったテーマで、日本のどこにでもありそうな家庭を描いている。
そうした風景が海外でも通じるのだとちょっぴり意外であった。しかし、よく考えてみると、家族の崩壊と再生は世界中の共通のテーマなのかもしれない。
家族は夫婦と大学生と小学生の男の子二人の4人家族が舞台である。親父はある企業の総務課長なのだが、ある日、総務の仕事を中国にアウトソーシングすることになって会社を辞める。
再就職しようにも、求人先の面接であなたはわが社にきて何ができるのですかと問われ、まわりとあわせるのがうまいとか、カラオケですと答えて、これでは再就職もおぼつかない。しかし、失業したことを家族に内緒にしているのである。
同じように失業中の高校時代の同級生が登場するが、ウソの電話で自作自演の演技をする。このエピソードはこんなご時世だから非常にリアルで身につまされる。
だから家に帰ってもギクシャクというかしらけた雰囲気で各人が勝手に振舞っているのである。この家庭の有様もぼくのうちも同じ家族構成なので多少似通ったところがあるが、唯一わが家はお互いに隠しごとだけはしないというのが救いでもある。え、そう思っているのはぼくだけ?
家族というものの崩壊というのは、親たちの“こんなはずではなかった感”と子供たちの“いかげん親のエゴはやめてよね感”の葛藤で、親たちはやり直せないかと悶えるのである。
夫婦役が香川照之と小泉今日子で、この二人はいまや引っ張りだこなのだそうだ。今回もぴったりで、香川照之のリストラされてもがき苦しむ表情、小泉今日子の思いっきりの開き直りの表情がなんとも印象的であった。
ともあれ、黒沢監督の光と風の使い方がすばらしい演出もみごたえがあり、堪能できる作品に仕上がっている。
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戯曲が映像になったかのような
とてもクールなコメディ映画
家族の「いま」を描いた秀作。香川照之の抑えた演技が見事。
素晴らしい作品
希望の朝
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