さて最終回は、ユーザとベンダーの関係の変化、あるいはIT業界にもたらす影響などについて考えてみましょう。
これまでの議論で、システムの構造から設計・開発や運用のやり方、プロジェクトの進め方、必要人材など多くの領域でこれまでとは違ったものになっていくことがお分かりになりましたでしょうか。
そうした変化は当然、ユーザとベンダーの関係にも影響していきます。直接的には、プロジェクト体制やマネジメントが変わって行くでしょう。
ここでこれまでの両者の関係をみてみましょう。簡単に言うと「情報の非対称性によるインセンティブの歪み」が特徴的であるように思います。
どういうことかというと、情報システムに関する情報は、専門家であるベンダー側のほうが圧倒的に情報を持っていて、ユーザ側の持つ情報は多くはありません。まずは、この情報のアンバランスがあります。
こうしたアンバランスがもたらすものは何かというと、悪く言うとベンダーが何をしてもユーザはわからないということなのです。ですから、ユーザはベンダーから開発にこれだけ人月がかかりましたからお金をくださいと言われても、高いけどしょうがないなあと言って支払うのです。こんな関係がいいわけありません。
こうした歪みを修正できる可能性がプロセス志向にはあります。なぜなら、ユーザが自分たちで作りたいと思ったシステムがそのまま実現できるようになり、しかも初期の段階でその姿が見えるようになるからです。
専門的、技術的なものは隠蔽されたビジネスコンポーネントをベースにユーザとベンダーが会話するのです。
こうしたことは、ユーザにとっては僥倖ですが、ベンダーにとってはどうでしょうか。問題はここにあります。このモデルでは、おそらく従来のようなコストとは全く違ったものになるはずで、大方のケースで低く抑えられるようになります。
ウオーターフォール用にたくさん抱えた人材を遊ばせることになりかねないので大変なことになってきます。だからといっていつまでもユーザが知りませんということはないのであって、徐々にユーザは気が付き出しています。
普通に考えれば、ITはそもそも使われてナンボですから、使われ方や使うものが変わったら、当然そのビジネスモデルも変化するのです。それを、自分たちのビジネスを守るために、ユーザに不当に費用を負担してもらうなんてことは本末転倒なのです。
そういう意味では、ベンダー側がユーザより先んじてビジネスモデル、収益モデルを変えていく必要があるのですが、どうも自己保全に軸足がいっているようでお先が思いやられます。こんことをしていると、わが国のSIerと呼ばれる会社はどうなるかはおわかりですよね。