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歩いても歩いても

あさっての日曜日に「東スポ映画祭」の受賞式がある。今年もそこに出席するのだが、この映画祭の作品賞が是枝裕和原作・脚本・監督の「歩いても歩いても」に決まった。「おくりびと」ではないところがおもしろい。それで急いでDVDを借りてきて観ることにした。

まず、このタイトルがいしだあゆみの「ブルーライトヨコハマ」から取られていたとは知らなかったのでちょっぴり驚いた。映画の中でもレコードがかけられあの懐かしい歌声が流れていた。

やはり、各地の映画祭が推奨した(東スポは各地の映画祭がノミネートした作品か選ばれる)だけのことはあるすばらしい作品となっている。この作品のキャッチコピーは「人生は、いつもちょっとだけ間に合わない」ということらしい。これも映画の中では、相撲取りの名前を思い出すのが遅れるというエピソードで語られる。

そのすばらしさは何かというと、狭い時間と空間にあらゆる家族の関係を凝縮させてしまったことにある。夏のたった2日間のことで、そして一つの三代家族だけの物語である。

登場する家族は医者を引退した父とその母の家に長女の家族、そして次男の家族がやってくる。その日は、既に亡くなった長男の命日だったのである。その中に、家族の間にある関係が徐々に明らかになる。すなわち、父と子、母と子、夫と妻、嫁と舅、兄弟などの関係が、ちょっとしたセリフのなかに表現されているのだ。

こうしたシチュエーションを出演した俳優陣が本当に自然に演じ、どこにでもありそうな普段どおりの場面が展開される。これがものすごいリアリティがあって共感してしまう。そして、この監督は、ほんと子役を使うのがうまい。

ところが、最初はなかむつまじい家族のように写ったのが、だんだん裏のほう、奥の方に潜んでいるドロっとした部分が顕在してくる。このへんは、何気ないところで鋭い言葉が発せられ、そのたびにドキっとする。

樹木希林が長男が自らの死を犠牲にして命を助けた子に向かって言う言葉や、夏川結衣演じる次男の嫁に向かって言う言葉は、どんと胸に突き刺さる。ぼくも経験するような日常的確執なので恐ろしくなる。

さて、この映画の主役はいたい誰なのかと思ってしまう。樹木希林は「東スポ映画祭」の助演女優賞をもらったので助演かとも思うし、次男役の阿部寛はどこかの映画祭で主演男優賞をもらっているから、主演なのかと思うのだが。

まあ主演か助演かはともかく、結局描かれている家族の中の中心にいたのは、母親役(祖母)の樹木希林であったように思うのである。“母は強し”というところか、というか“ああ女は恐い”というのが男のぼくの素直な感じである。男は単純だなあということである。

それにして、こうして短い時間と狭い空間にいろいろな関係を凝縮してしまった是枝監督の技量に敬服である。いい映画です。

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2009年03月20日 12:19に投稿されたエントリーのページです。

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