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システムの科学

知の巨人、1978年度のノーベル経済学賞の受賞者でもあるハーバート・A・サイモンが、1967年に書いた"The Science of the Artificial"という論文をベースにした本「システムの科学」を読む。社長がぼくがサイモンに興味があることを知って、学生の時に読んだと言って貸してくれたのである。

テーマは原題のように、「自然物とは異なる「人工物」の科学はいかにして可能であるか?」となる。

これが、今から30年前に書かれたものであるとは驚きである。さらに、経済学や経営学にとどまらず、物理、化学からコンピュータまで非常に広範な領域に言及していて、その偉大さに敬服させられる。

全部を追いかけるわけには行かないので、その中でもいまぼくがやっていることに関連していることが出てくる部分について記す。自慢するわけではないが、ぼくはサイモンという名前だけは知っていたが、この本で彼の論理の一端を知って、結果的に同じようなことを言ってるじゃんとあつかましくも思ったのである。

全体の内容については目次を提示する。
1. 自然的世界と人工的世界の理解
2. 経済合理性:適応機構
3. 思考の心理学:自然と人口の結合
4. 記憶と学習:思考に対する環境としての記憶
5. デザイン科学:人工物の創造
6. 社会計画:進化する人工物のデザイン
7. 複雑性に関する諸見解
8. 複雑性の構造:階層システム
付.企業組織における合理的意思決定

このなかで、最後の2項目である8.複雑性の構造:階層システムと付.企業組織における合理的意思決定についてみていく。

まずは、複雑性についてであるが、

複雑なシステムとは、多様に関連し合う多数の部分から成り立つシステムである。 そのようなシステムにおいては、全体は部分の合計以上のものである。

と定義して、つぎの4つの側面について述べている。
1. 複雑性がしばしば階層的な形態をとること
2. 階層的なシステムの方が、同規模の非階層的システムに比べて、はるかに短時間に形成されること
3. 階層的に組織化されたシステムの動態的な特性を検討し、そのシステムを下位システムに分解することで、行動を分析できること
4. 複雑なシステムとその記述の関係

すなわち、中心テーマは、“複雑性がしばしば階層的な形態をとること。そして階層的システムは、それぞれのシステムの個別的内容から独立した共通の特性をもつことであり、階層こそ、複雑性の構築に使用される構造的仕組みの中心的なものの1つである”ということである。

ではそれぞれに見ていくが、各側面での議論の要約をとりあげることにする。

【階層的システム】 安定した中間形態がある場合には、それがない場合に比べて 単純なシステムから複雑なシステムへの発展がずっと迅速に行なわれる。階層的なシステムだけが、発展に必要な時間を持つ。
【準分解可能性】 構成要素内の結合は、一般に、構成要素間の結合より強い。この事実は、結局、構成要素間の内部構造の高頻度のダイナミックスを、構成要素間の相互作用にみられる低頻度のダイナミックスから区別することになる。
【複雑性の記述】 構造が複雑であるとか単純であるとかということは、記述の仕方によって決まってくる。この世界にみられる複雑な構造のほとんどは、非常に重複的であり、われわれにはこの重複性を利用して、その記述を単純化できる。 複雑なシステムの記述は多くの形態をとるが、なかでも、われわれは、状態記述を持つことができるし、またその処方を書くこと(筆者注:過程記述)ができるのである。

こうしてみると、企業情報システムも実は複雑系であり、階層的システムになっていることがわかる。
そして、それがある構成要素に分解でき、強く結合された構成要素とその要素間の関係性から成り立つこともわかる。組織でもシステムでも構成要素である小グループや単位業務処理をつなぎ合わせて上位階層ができるという姿が浮かんでくる。

そして、こうした複雑なシステムを記述するのには、状態記述、すなわちどうなりたいか、望ましい状態はといったことと、そのためには何をすることなのか、どう動くのかという過程記述を描くことになる。

ぼくはこのこと前から「構造化」と呼んでいるが、いまのSOAやBPMの思想はこのことに他ならないのである。そうした意味で、非常に共感し勉強になった本である。

つぎに、この本の最後の付記でサイモンがいっている意思決定プロセスについては次回に書く。
 

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2008年11月 5日 11:22に投稿されたエントリーのページです。

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