再びSaaSの話。SaaSは文字通りソフトウエアをサービスとして提供し、それを使って業務システムを動かすことだが、そのソフトウエアを作る部分と運用する部分をアウトソーシングしているというふうに考えられないことはない。
企業の情報システムというのはもちろんそのライフサイクルがあって、設計・開発・運用・保守というサイクルがある。これを自社で全部やるところは少なくて、設計・開発のところはベンダーやSIerに丸投げするのもある意味アウトソーシングであるわけです。そして、運用・保守もハウジング、ホスティングときてアウトソーシングとなっているケースもある。
そう見ていくと、SaaSって別に特別なことではなく、情報システムのライフサイクルのほとんど全部をアウトソーシングしていることに他ならないのではないだろうか。
今までは、フルアウトソーシングというと、自社でハードウエアをもたないで運用をやってもらうというイメージだったけど、それはよく考えるとフルではないのだ。業務アプリケーションのところは自分たちで作ったものを運用してもらっていた。それらも入れて初めてフルアウトソーシングと言える。だから、SaaSでやっと真のフルアウトソーシングになったということなのかもしれない。
そう考えてみたのは、従来言われていたフルアウトソーシングはどうも成功したとは言いがたく、むしろ今は下火になっているように思えるからである。そんな中でまたさらに進んだフルアウトソーシングってありえるのかなあと素朴に思っているのである。
これまでのフルアウトソーシングが拡がらなかった理由は、エンドユーザの要求がアウトソーサーに届かなくなってしまったことで、ここでも“情報の非対称性によるインセンティブの歪み”がある。ユーザ要求を聞くことが決してアウトソーサーを利することにならない。そして最初はコストダウンとして始めたがだんだんとコストダウンのインセンティブがどこかに行ってしまう。
SaaSはこうしたことはだいじょうぶなのだろうか。いやSaaSはユーザ自身が必要なサービスを選んで使えばいいから、ベンダーの言いなりにはならないという意見が当然ある。ということは、SaaSを適切に活用するにはエンドユーザ部門が直接自分たちの必要なソフトウエアをもってきて使うことになる。
そうなると、情報システム部門のガバナンスが効かなくなり、シャドーITが蔓延しかねない。そうした矛盾を抱えていることをよく考えておく必要がある。やみくもにコストがかからない、すぐにやめられる(そんなに簡単に使いものにならないからやめますなんてできませんよ)、手間がかからないからといって飛びつくのはどうかと思うのである。
あくまで自分たちの手でやってみてこれはもう外に出してもいいという風にしないと、結局は高いものについたり、役に立たないものを使ったりというようになってしまうような気がする。そんな簡単に打ち出の小槌は手に入らないのだ。
