今日の新聞の記事で注目は、JパワーのCTIによる株買い増しを政府が中止を勧告したというニュースだろう。関税・外国為替等審議会というのが議論していてその結論が今のような中止勧告ということになった。
これを報じた読売と朝日で意見が違っている。こういうときこそ、前に紹介した「あらたにす」というのを見るといい。英字で書くと「allatanys」でこれは、”All at Anys”という意味だとある日経の人が言っていた。それはともかくとして、くらべる社説で読売と朝日の社説を読み比べるとその違いがわかる。
読売の主張:
電力の安定供給確保の上で、妥当な結論だ。
中略
審議会が判断を下す際、問題視したのは、短期的な利益を優先するTCIの姿勢だった。
Jパワーは電力卸最大手で、国内5位の東北電力に匹敵する規模がある。長大な送電線網を持ち、青森県内に原子力発電所を建設する計画も進めている。
20年、30年という長期的な視点での経営が欠かせない公益企業である。ところがTCIは、投資期間として3~5年を想定し、その間に、投資に見合う利益を稼ぎ出す姿勢でいる。
TCIは、取締役を数人受け入れ大幅な増配に踏み切るよう、要求していた。増配の原資確保のため、Jパワーが決めた料金の一部値下げにも反対した。
TCIは最近、原発の建設計画について、新しい提案を出してきた。原発をJパワーから切り離し、事実上、国営化させる内容だ。こうした動きに、審議会が厳しい視線を注いだのも当然だろう。
勧告について、「外資に対し閉鎖的な日本」というイメージが広がる、と懸念する声もある。だが、国益上の懸念が生じる場合、何らかの形で投資を制限するのは国際的な常識だ。
今回は、国益にかかわる企業に対する問題多い投資という、特殊なケースに位置づけられよう。
そうした事情を丁寧に説明し、健全な投資は大歓迎であることを政府は内外に表明すべきだ。
朝日の主張:
前略
たしかに電力は公益事業であり、長期的な経営が必要だ。だが、それを外資規制で守れるとは言えない。
Jパワーは国策会社を民営化し04年に上場した。上場すれば株主は選べないし、上場時には海外からの投資を呼びかけもした。今になってルールの不備が明らかになるとは、民営化計画に欠陥があったことに他ならない。
守るべき「公益」が何かも検討すべきだ。大間を含む政府の核燃料サイクル政策が妥当か、議論が残っている。見直しの余地はないのか。経済産業省に天下り先を守ろうという下心はないのか。そういう疑問にも政府はきちんと答えなければならない。
さらに、もっと大きな「公益」がある。日本を海外へ開かれた国にしていく、という目標である。人口減少時代に突入した日本にとって、外国の優秀な技術や人材、経営を呼び込んでくることは、経済を活気づけるのに欠かせない。それなしに、今後の高齢化社会は乗り切れないだろう。
今回の決定は「日本は資本鎖国だ」という海外でのイメージを増幅するに違いない。その損失の大きさと、外資規制の効果を十分に比較検討したうえで発動したのか、大いに疑問だ。外資を恐れ嫌っていては、長い意味で国益を損なうことになりかねない。
外資規制を発動するなら、同時に、外資へいっそう広く門戸を開いていくというメッセージを強く発しなければならない。政府の責任は重大だ。
さて、どっちなんだと考えてしまう。ぼくはこの問題に関して言えば、朝日の法に分があると思う。池田信夫blogに面白いコメントがある。審議会の部会長の吉野直行氏を痛烈に批判しているので一部紹介する。
そして今回のJパワーの件で吉野氏は、記者会見で「原子力事業は20年から25年の長期にわたって考える必要があるが、(TCIが志向している)3~5年の投資では、長期投資を控え短期的な配当を多くするよう行動する」と断定した。これに対してTCIのジョン・ホー氏は「そんな説明はしていない」と否定し、「それなら株を取引するのを20年間禁止する法律が必要ではないか」と反論した。吉野氏も経済学者なら、ホー氏のほうが正しいことぐらいわかるだろう。吉野氏のような論理が成立するなら、電力会社の株主はみんな株を20年以上もっていなければならない。それに彼は、TCIの買い増しで「原子力政策に不測の影響が及ぶ」と何を根拠に断定したのか。TCIの目標としている20%では拒否権も行使できないし、ホー氏は「株式を信託して重要な意思決定には関与しない」と約束しているのに。
要するに、吉野氏は経産省があらかじめ決めた結論に合わせて理屈をつけ、北畑次官の「資本鎖国論」を学問的に偽装したのだ。それが御用学者の処世術というものだろう。
これまた手厳しい。ほんと、いまの経済産業省の行きかたはやはり鎖国的な方向であると言わざるを得ないと思う。そんなことをやっていればどんどん世界から取り残されてしまう。取り残されてしまった日本の中で生きていきたいと思っているのだろうか。
そして、もっと単純なこととして朝日も言っているように、上場しておいて株を買い増ししてはいけませんよとよく言えるなあということである。読売の言う「健全な投資は大歓迎である」ということだが、この健全な投資って何よと思う。株式市場で健全も不健全もないんじゃないの。あるのは経済合理性だけなのじゃないのかなあ。