ある人から面白いよと言われて手にする。「夢を食った男たち」(阿久悠著、文春文庫)である。副題が「「スター誕生」と歌謡曲黄金の70年代」とある。
これは、1992年10月から翌年3月までの半年間、「スポーツニッポン」紙上に掲載された「阿久悠の実録テレビ三国志」という連載をまとめて本になったものである。そして、そのタイトルからもかなり面白いのではないかと期待をもったのであるが、残念ながらちょっぴり期待はずれであった。
それは何に起因しているのだろうかと考えたら、どうも新聞の連載だったからではないかと思う。新聞の連載というのは、1回1回ミクロの起承転結を意識するはずで、それを本にするとマクロの起承転結と整合しなくなってしまうという問題があるのではないでしょうか。
従って、断片的には面白いのですが、じゃあ全体として何なのだろうかと感じてしまう。題名の夢を食った男って誰のことなのか、単なる時代という状況の解説なのか、うーんよくわからん。エピソード的にはああそうだったのかとか、ぼくはほぼ同時代を生きてきたのでよくわかるし、なつかしくなる。
前半の大半が「スター誕生」に費やされていて、森昌子、桜田淳子、山口百恵の中三トリオの誕生そしてピンクレディで終焉を迎える話である。また後半はグループサウンズ、特にザ・スパイダーズの誕生秘話だとかが語られているが、それはそれでなるほどとおもうのだが、すごく感心したのは、阿久悠の時代の風を感じる力というか、変化をとらえる目というかそこがすごい。
まあ、だからこそあれだけの詞を書きながらいつも時代の少し前を行くことができたのだろう。この少し前を行くのがすごくむずかしい。彼の歌詞は何年か経ったあとでも決して古くないというのはそういうことなのだろう。
この本はそこを読むことをお薦めする。

