テレビを見ないと言っておきながらテレビの話で恐縮なのですが、2日にNHKで放映された「プロフェッショナル 仕事の流儀」のイチロー・スペシャルはとてもおもしろかった。イチローはなかなかマスコミに露出しないのでそのナマの声や姿が見えていないのだが、今回は自宅や奥さんの映像も映し出されていて、その素顔を知ることができたのである。
最初に驚いたのは食事のシーンが出てくるのだが、それは朝昼兼用の食事で7年間毎日カレーしか食べないのだという。いいですか7年間毎日ですよ。それも奥さん手作りの同じ味のものなのです。
それから、試合の臨み方もいつも同じで、練習も全く同じことをこなして試合に臨むのだそうだ。決まりきったことをやることで試合に集中していく。うーん、わかるような気がしますね。ルーティン的なものは極力パターン化して、神経は別なところへ向けるというのは野球に限らず、仕事や日常生活にもあてはまるのではないでしょうか。
さらにおもしろい話。イチローは試合前のバッティング練習でやすやすとホームランを連発するんですね。そうしたら、イチローが、ホームランはいつでも打てると豪語していた。芯に当てて飛ばせば打てるのだそうだ。
また、例の背面キャッチのことに話が及ぶと、あれは遊びでやっているのではなくちゃんと意味があるという。それは、平凡なフライって意外とミスしやすいのだそうだ。油断して一瞬ボールから目を離してしまうからだ。そのために目をそらせても取れる背面キャッチの練習をしているとのこと。
この放送での最大のテーマは、もう十分に実績を残しているのに、まだ達成感に飢えていること、そのためにまだ進化しようとして、これまでのイチローを捨てようとしていることだろう。こりゃすごいのひとことである。
昨年までのイチローは重圧に負けていた。毎年ヒットを170本くらい打ったころから重圧で打てなくなったりしたそうだ。それを何とか技術でカバーしていたが、それを今年は、重圧から逃げない、立ち向かうことにしたのだという。そのためにイチローが変身したこと、進化させたことは何だったと思いますか?
それは、“ストライクだけ打つ”という単純なことだ。イチローはなまじ技術や身体能力が高いがゆえに、相手投手の難しい得意球を打ってやろうだとか、ワンバンドをヒットにしたように訳のわからないボールに反応してしまっていた。
それを改めるという。イチロー自身も語っていたが、ストライクの球を打つのは世界一である。だから、普通に打てる球だけを打ちにいくというのが新しいイチローの姿である。
なるほど、これも野球以外でも通用することかもしれない。あれやこれやと手を出すのではなく、自分のできるゾーンで目一杯勝負することが大切なのではないのかと思わされる。
それと、だからこの結論を採用すればいいのかというとそうではなく、紆余曲折があってたどりついたわけだから、その過程が非常に重要であることは言うまでもない。
それにしても、NHKもたいしたものだ。こういういい番組は歓迎だ。今年イチローがマグリオ・オルドニエスとアメリカンリーグの首位打者を争っていて最後に負けてしまって2位になったが、その負けを悟った試合でイチローがセンターの守りで涙を流したのをカメラが捕らえたのは素晴らしかった。
あらためて天才イチローのすごさを知ったのであった。