非常に多くの人に読まれる、あるいは影響力のあるブログを書くひとを「アルファーブロガー」という。そういう人のひとりに池田信彦さんがいる。この人は元NHKの記者で今は上武大学大学院教授であるが、ブログ上でITやメディア、経済学などで多くの発言を行っている。
何しろこの人のブログは、平日で平均25000アクセス、ユーザ数でいうと平均1万人の人が見ている。小飼弾さんのブログはもっと多いらしい。ちなみにぼくのブログはやっとこさ1日平均100人です。
その池田信彦さんが書いた「過剰と破壊の経済学」(アスキー新書)を読む。副題が「「ムーアの法則」で何が変わるのか」というもの。有名な“半導体の集積度は18ヶ月で2倍になる”というやつである。この法則により多くの企業が成長し、また消えていったのである。まさに過剰と破壊の経済学というわけである。
確かに、ムーアの法則は大きな影響があったが、それは主としてハードウエアの世界で、そのハードウエアの劇的なコストダウンが及ぼすイノベーションである。ところが、一方でソフトウエアの世界はというと、ハードウエアの劇的な変化についていけてない面がある。そして、放送・通信の分野では、インフラが限りなく低コストになってコモディティ化したとき、ボトルネックは通信回線や電波ではなくコンテンツになってくる。そういう変化なのである。
本当に、このたった半世紀でものすごいことが起きている。おそらくぼくらが感じている以上にすごいことで、さらにこれからも革命的なことが起こるに違いない。ぼくが生きているうちにこのIT革命はどうだったのかを知ることは到底できない。そんな時代に今生きていることをこの本は教えてくれる。
まあ、トーマス・フリードマンや梅田望夫の本をよんでいれば、似たようなことが書いてあるので感動はしないし、ブログをいつも読んでいるから言っていることに若干新鮮さがないということもあり、前半はそうだねという感じで読み流した。しかも、ブログの歯切れのよさが少し薄れていたりして、おいおい池田節を聞かせてよと思ったりした。
ところが、後ろのところの通信とか放送に関する文章でやっと本領発揮ときた。得意な所でもあるし。特に持論でである今や障害は著作権や個人情報保護であるという切り込みはすかっとする。
そして、最後に問題提起として次のようなことを言っている。
「ムーアの法則」は、情報処理の主役を大企業や官僚からユーザに移して「民主化」し、ITで武装した個人が直接グローバルにつながる世界を実現した。 それは、フラット化してみんなが平等になるユートピアではなく、既存の権威や肩書きが意味を失ってすべての個人が対等に競争し、情報処理能力による所得格差が拡大する孤独な世界である。
さて、こうした世界をぼくらはどうしていったらいいのだろうか。何はともあれ、よくまとまった良書です。

