ちょっと中国ネタが続いて、食傷気味のかたもおられるかもしれませんが、今度はそれこそ食の話です。ついちょっと前のニュースで日本の“ナマコ”の価格が急騰していて、5年前に比べて5倍になっていると報じていた。食材は中国からは入ってくるが、日本から中国に出て行くものがあるのかと思っていたが、意外やナマコが輸出されているのですね。
ナマコは日本じゃあまり食べないが、中国では高級食材なんです。だから、中国から日本へマツタケが入ってくるように、日本から中国にナマコが入っていくのです。
ナマコは、日本では酢の物みたいにするぐらいでほとんど食べないのですが、中国では宴会などでは必ず出てきて、中国人は喜んで食べます。中国の高級食材というとその他では、フカヒレ、ツバメの巣、干しあわび、上海蟹など多くのものがありますが、みんなおいしいですよね。
30年前の食事情を少し。当時は文化大革命がやっと終焉を迎えたところでしたが、この文化大革命というのがひどいもので、北京あたりの高級料理店の多くは閉鎖されてしまったのです。しかも、そこの料理人は下放といって地方に追いやられてしまっていた。だから、おいしいものを食べようとすると、ホテルのレストラン、といっても市内では北京飯店、新橋飯店、民族文化宮くらいしかないのだが、そこか、あるいはわずかに残った専門店にいく。
中では、北京烤鴨店で食べた北京ダックは最高にうまかった。そのほかには、ジンギスカンもうまかったし、一度、表は普通の民家でそこから裏に行くとレストランになっているという店に行った。おおっぴらに開けないので隠れて営業しているらしく、料理長は有名な人だという。そこで食べたコース料理もすばらしかった。その頃は、店の数は少なくなっていたが本物を出すところがあったのだ。
5年後に行ったときには、大きな北京ダックの店がいっぱいできていた。北京ダックデパートだと通訳が言っていた。もちろん味は5年まえに比べて劣るのは言うまでもない。
中国では、高級食材にはいるのかどうかわからないが、料理のしかたが変わっていたり、ゲテモノに近いものがある。
変わった料理法というか、少し残酷な例で、西湖のほとりで食べた鯉料理のことである。表面は油で揚げてあるのだが、中は刺身というもので、外側がかりかりっとして中はぷりぷりっという食感を楽しむようだが、中味がまだ動いているのだ。なぜか、やけどをしたからだを思い浮かべてしまい、あまりいい気持ちがしなかった。隣に座ったかわいらしい顔をした中国人の女性がにこにこしながらうまいうまいと食べているのを見ると残酷だなあと思ったのであります。
ゲテモノといえば、みなさん熊の手を食べたことがありますか。これが、高級料理なのです。当時は、普通のフルコースだったらひとり2、3千円で食べられたのだが、熊の手料理は、その3倍ぐらいした。といっても1万円もしないのだから驚きだ。熊の手は前の晩からオリーブの葉と一緒に一晩煮込んでから食べる。だから、ずっと前に予約を入れて、期待を胸に席についたのです。
さあ、出てきました。手首のところから切り落とされて、そのままでてくるのです。毛はむしってあるがところどころに残っているし、爪もそのままの状態でお皿にのっているのを見たら、さすがのぼくもひるんだのであります。さて、この高級料理はおいしかったでしょうか。いやー、食えたものではない。ぼくは途中で気持ちが悪くなって、ちょっとかじっただけであった。
ところで、熊の手は左右どちらがうまいか知っていますか。そうです、左手なんですね。なぜかというと、熊は右手でアタックをして、左手は蜜をなめるので甘くておいしいのだそうだ。え、ぼくの食べたのは確か左手だったはずだが。
こんなものを大金はたいて食べるやつがいるのかと思っていたら、帰国して2、3週間して、ひょいと新聞をみたら“中国から高級食材の熊の手を輸入”という記事が目に留まった。よく見ると、そこに日本で出される熊の手料理は、ひとり20万円すると書いてあった。わー、お金を捨てるようなものだからやめなさいと叫んでみたが、おいしさではなく珍しさを食べるんだから余計なお世話かもしれないと思ったのであります。
