中国には「人民開放軍」という軍隊がある。中国の軍隊のおもしろいところは、軍隊といっても国軍ではないのです。中国共産党中央軍事委員会の下に置かれているんです。党の軍隊なのです。それから、「自力更生」という方針が軍隊にも適用されているということ。ちなみに、この「自力更生」はぼくらが一緒に仕事をするうえで非常に厄介だった。このことについては、またあとで記す。
さて、その軍隊のことだが、ぼくの出合った軍隊経験を3つばかし。まずはなんといっても、最初に北京空港に着いたときのことが忘れられない。当時はもちろんJALもANAも飛んでいなくて、ぼくらは羽田からパキスタン航空の飛行機に乗っていった。数時間後北京空港に降り立ったのだが、真っ暗やみのなかにポツンと止まっている。やがて、ドアがあいた瞬間どっと銃をもった人民解放軍の兵士が入ってくるのである。わけのわからない中国語でわめきちらす(ように聞こえる)のを聞いたとたん、機内で呑んだ酔いがいっぺんに醒めてしまった。こりゃ、恐ろしい国にきてしまったと思ったことを覚えている。
つぎは事故の話。前回プラントの中にあるフレアスタックに松明をもって登った命知らずの英雄の話をしたが、そのフレアスタックの先っちょについているバーナが割れてしまったことがあった。何しろ、120mの高さのところである。当時の中国にはそこまで届くクレーンがなかった。さて、そのバーナの修理をどうするか。
突然中国側から今から北京の市街にいきますからといって車が用意された。みな訝しげ車に乗り込んだが、それはたまの外出だから喜んで行った。帰ってみるとそのバーナの修理が終わったとのこと、どうやってやったか教えてくれないのだが、内緒で聞くと軍隊のヘリコプターで一旦吊り下げて、地上で修理したあと再びヘリコプターで据え付けたとのこと。おおやるなあと感心したのである。ところがところがである。あとでわかったのだが、実は一回失敗したのだというのだ。どうも、最初の一機は何と吊り下げるのに失敗して墜落したのだそうだ。しかも死者がでたというのだ。これにはほんとびっくりした。
最後は、軍隊ならお手の物という話。北京には工人体育場というのがある。来年のオリンピックのサッカー会場となるところだ。30年前に中国にいたとき、そこにサッカーの試合を見にいったことがある。確か、メーデーのころじゃなかったかと思うのですが、北京と上海かの解放軍同士の試合である。
満員の観衆で盛り上がったのだが、ハーフタイムになると突然花火が上がるのである。サッカー場の観客に向けてだから、みな花火大会を楽しむことになる。ハーフタイムが30分以上なのである。ようやく花火大会が終わって後半が始まる。こりゃサッカーも花火も楽しめたからよかったと言いながら、会場をあとにしようとしたら、試合終了後もまた花火を上げてくれる。ところが、なんとその花火を打ち上げているのが人民解放軍の兵隊さんだったのである。それは見事に統率の取れた打ち上げでしたね。
だから、中国の人民解放軍というのは意外とこんな場面にも登場してくるので、ある意味人民のための軍隊ともいえるのだ。きっとオリンピックでも大活躍するんじゃないだろうか。