またすさまじい本が出た。いま売れている「反転」(田中森一著 幻冬舎)である。え、こんなことまで書いちゃっていいのという感じ。政治家や企業家、ヤクザなどが実名で登場する。闇社会の実態を赤裸々に描いていて、飽きさせない読み物で一気に読んだ。
著者の田中森一は元特捜検事で、撚糸工連事件や平和相互銀行不正融資事件など数々の経済事件を手がけた辣腕検事だったが、なぜか検事をやめ弁護士に転じた。いわゆるヤメ検である。弁護士になってからも特捜時代の情報網や人脈でこれまた多くの事件の弁護を行なっている。でも、弁護士に転向した理由のひとつに経済的なこともあったと思うが、弁護士ってすごく儲かるんですね。まあこのひとは特別なのかもしれないが、検事を辞めるとすぐにいろんな企業や個人から三顧の礼で顧問契約をしてくれといってきたそうだ。
この本は、大きく3つくらいに分けられていて、最初が自分の生い立ち、司法試験に受かるまでが描かれている。何しろこのひと半端ではなく貧乏だったのだ。それでやっと岡山大学の法学部に入学し、学生の時に司法試験に受かっている。そのあたりのストーリはとてつもなくおもしろいし、感動させられる。
次が、検事時代でたたき上げの検事として数々の事件を起訴していくのだが、たたき上げであるがゆえに上司との衝突や被疑者との交流など、普通の検事とは違った生き方をしている。
そして、弁護士への転向。ここでは時あたかもバブルであり、その狂乱ぶりが、本人も含めて描かれている。このくだりはほんとびっくりする。ぼくらが新聞や雑誌でしかうかがい知ることができなかった、イトマン事件の許永中、伊藤寿永光、仕手戦の池田保次、小谷光浩、住専の末野謙一、政治家の山口敏夫、ヤクザの宅見勝等々生々しい話が満載だ。
しかしながら、ぼくはこの田中森一という男を好きになれない。清濁併せ持っていて、いくらきれいごとを言ったところで所詮世の中はどろどろしたことで成り立っているのだみたいに豪語するわけで、だからこそ、手のひら返したように検事から弁護士に転進できるような気がする。バブルのときに大もうけをしてヘリコプターまで買ってしまうほどクライアントのバブリー紳士たちと同類なのだ。
一方でかわいそうだなという気もする。彼は今石橋産業事件の詐欺容疑で懲役3年の実刑判決を受け、最高裁に上告中であるが、結局、成りあがり者は最後は別の大きな力で抹殺されるのではないだろうかということである。例えば、多少強引だが田中森一と田中角栄は似たところがあるような気がする。
ホリエモンや村上世彰などの犯罪もこの本に出てくる事件の延長にあるわけで、経済事件の実態とはこういうものだというのがわかるのでおもしろい。とにかくとんでもない本だ。
- 田中 森一
- 単行本 / 幻冬舎 (2007/06)
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- Amazon おすすめ度の平均:

凄すぎ
凄すぎる。
貧困・バブルー企業社会の釜がひらく
