いま、個人の情報処理について考えていて、一部「働きたくなるIT」にも書いているんだけれど、本当に有用で信頼のあるデータを取得するにはどうしたらいいのかという問題がいつもついて回る。
そこで「データはウソをつく」(谷岡一郎著 ちくまプリマー新書)を読む。著者の谷岡一郎は大阪商大の学長で、専門が犯罪学、ギャンブル社会学、社会調査方法論。この本の副題が、科学的な社会調査の方法とあるように、社会調査方法論に関するお話。方法論については「働きたくなるIT」で論じることにするが、こちらでは、だまされたり、間違ったりする例がいろいろ書いてあるので、それらを中心に書く。あ、そうなんだと気づかせてくれるおもしろい話です。
なぜ、そういうことがおきるかというと、社会科学界の事実というのは、自然科学と違って、「蓋然性(確実性)の世界」で、基本的には灰色であり、その灰色が限りなく白に近いか黒に近いかである。だから、そこには、時間、空間、そして文化の差異による制限がついてくる。このあいまいさを誤用したり、悪用するために間違ったデータ解釈が行なわれるのだ。
そして、マスコミは自分たちの都合のいいように事実をねじ曲げているというわけだ。あの「あるある大事典」の捏造問題である。ところが、著者は、それをいうなら、占い師が未来を予言したりする番組も捏造であり、また、宝くじがあたるジンクスとか、金運の上がる財布など、明白にウソの広告を載せることだって問題にすべきであると主張する。ぼくも全く同感で、極論するとテレビ、新聞などのメディアの情報はみんな捏造である。ああ、スポーツの試合結果だけを除いて。
あと大いに気になるのは、誘導することなんですね。言葉やその他の表現によって予断を与えてしまうやり方である。例えば、「○○法案、50%が賛成」と書くか、「○○法案、50%が反対」とかくかで読者のとらえ方が影響受ける。
また、東洋大学の平松貞実という人の実験で同じ質問でも言葉の順序で答えが変わる事例です。
これっておもしろいでしょ。
最後に、因果関係モデルの勘違いの話。よく因果関係について、何かの現象があたかもある事象と大きく関係していると思い込むと、実は単に勘違いしているだけということがありますよね。非常におもしろいエピソードを。
“連合軍の戦闘機スピットファイアが独軍のメッサーシュミットにバタバタと撃ち落され、命からがら帰ってきた機体のダメージをたくさん調べた将軍がいた。そして尾翼のダメージが特にひどいことを発見。本国に「スピットファイアの尾翼を強化するように」と打電したんだそうだ。本国には脳ミソのしわがちょっと多い人がいて、こう返事してきたという。「尾翼をやられた戦闘機は一応帰ってきたのではないのかね。他の場所を打たれた機が帰ってこなかったとすれば、強化するのは別の所ではないのかね」“
これまた、われわれでも時々犯す誤謬の例ですよね。
で、結局こうしたゴミだらけの情報を使いこなすのに必要な能力は、教養、サーチ・リテラシー(ツッコミを入れる能力、ウソを見抜く力)、セレンディピティ(必要なデータや情報、有用なデータや情報を短時間で見極めること、そして不要なもの(ゴミ)は切り捨てる能力)の3つなんだそうです。
なかなか参考になった“ゴミにならない”おもしろい本でした。
- 谷岡 一郎
- 新書 / 筑摩書房 (2007/05)
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新聞やテレビに踊らされないように
ちゃうやろ それ!
「マニュアルを作る側に立て」
