「経済再生は「現場」から始まる」(山口義行著 中公新書)を読む。内容は、日本経済再生の兆しが見えてきたが、まだ大企業を中心としたもので、中小企業や地域では苦しんでいて、それを解決するカギが「現場」にあるというもの。いくつかの例が紹介されている。
地方銀行である常陽銀行が不良債権を「処理」するのことなく、不良債権を「減少」させることを行なったもの。すなわち、貸出し先企業の経営改善を銀行がみずから積極的に支援していくというものである。また、群馬県榛名町で起こった町の再生活動がある。榛名湖はワカサギ漁で有名な湖であったが、1997年ころから急にワカサギが釣れなくなってしまう。そのとき市民の有志がたちあがり、炭素繊維の汚水浄化作用を利用して湖の水をきれいにするプロジェクトを成功させたこと。さらに、大阪市の中小企業ネットワークなどの例があげられている。
なかでもすごくおもしろかったのは、三重県の尾鷲総合病院の取り組みで、いまこうした地方の病院では患者の高齢化が進み経営困難に陥っているところが多いのだが、ここでは、NSTというチームで患者の栄養管理を行い、患者の体力や免疫力を高めることで、例えば院内感染が激減したり、そうした変化で経営も安定した例が紹介されている。「現場」の工夫次第でで大きな効果を上げられるという好例である。
確かに、今は地場中小企業をどう活性化するかは重要なテーマであると思う。ぼくも今ITを活用したこうした取り組みを企図しているのだけれど。まだまだ、全体としてのうねり、あるいは組織的な動きにはなっていない。誰かすごい人がいてその人がわが身をかえりみず努力して始めて成り立つところがある。
そうした、硬直感を打ち破るにはどうしたらいいのだろうか。ぼくはいちばん大きな要素は。「情報開示」だと思う。情報をオープンにし、みんなで共有することで連帯感も生まれるし、組織的な動きにつながるような気がする。この本のなかにも、大阪市の例で、中小企業のネットワーク化を先頭にたって推進したある会社の社長は、自分たちが苦労して開発したものを惜しげもなく見せて、それで他の会社から信頼を得たことで、非常にうまく機能するネットワークを構築している。
また、中小企業を支援する「金融アセスメント法」の制定に関わった著者が、従来の官僚主導型金融システムから脱却するには、その条件として、「情報の相対化」と「評価の客観化」が大事だと言っている。この「情報の相対化」というのは、情報公開ということで、金融機関を比較したり、それぞれの特徴を把握するのに役立つために意味ある情報を教えてくださいということなのである。前に、ぼくがランキングを発表しろと言ったのはまさしく「情報の相対化」と「情報の客観化」のことなのだ。
ところで、「現場」という意味はどういうことなのだろうか。逆に「現場」でないところってどこなのだろうか。まあ、常識的には生産現場だとか販売現場だとか、ヒト・モノ・カネ・情報のサービスの授受がある接点のところになると思うが、現場重視に舵を切りすぎると、この本にもこんな記述もあるのですが、「これからのあるべき企業は、「経営者が一市民である企業」です」という、おいおいちょっと振れすぎじゃないのかということになる。世の中、「現場」だけで動いているわけではなく「非現場」もあってこそバランスがとれると思うのですがいかがでしょうか。
それはともかく、これからの日本経済の再生のヒントになる論旨でなかなかよく書けていますのでご一読を。