技術伝承 - 働きたくなるIT(3)
2007年問題とやらで、団塊の世代の持つ技術やノウハウが消えていってしまうと危ぶまれている。もう定年を迎える人が出てくるのでもはや遅いのであろうか。いや、現実には、能力のある人やノウハウの蓄積のある人は65歳くらいまで働くだろうから、それまでに何とか技術伝承をしておかなくてはいけない。
これは、どういう業界で起きているのだろうか、実はIT業界はこういう問題はないのだ。昔の技術を持っていても役に立たないのだから。製造業や建設業などで問題となるのだろうか。
筆者は、最初に入った会社が化学メーカーだったので、この現場の技術やノウハウの大切さとか伝承の難しさなどがある程度理解できる。ちょっと話がそれるが、この問題がおきた原因について考えてみたい。
われわれが入社したころは、現場にはバリバリのたたき上げの人がたくさんいてものすごく恐かった。それぞれがその道の高い技能をもって、自信ももっていた。しかし、それを後輩にオープンに開示するかというとそうではなくて、われわれは盗むようにして技術を習得したものだ。今だとISOなどで基準書だとかマニュアルだとか整備するようになったが、当時は肝心なところはベテランの頭の中にあった。
でいつごろから技術・技能が継承されなくなったのだろうか。筆者は詳しく調べたわけではないので、独断と偏見かもしれないが、大学進学率と関係があるとみている。
どういうことかというと、昔の現場の技術を支えていたのは、地元の工業高校や商業高校をでた人たちだった。かれらは、優秀でしっかりとした専門知識も身につけ、何よりもその道のプロになろうという意欲があった。また、それが会社のためにもなったし、自分たちの生活を確保することにつながったのだ。それが、日本が豊かになるに従ってそうした実業高校に行っていた子たちが、みな大学に進学し出したのだ。
彼らは、大学に行って一体何をしたのか?おそらく、これも推測の域を脱していませんが、都会で遊ぶことと簡単にかっこよくお金儲けができそうな幻想を身につけたのではないだろうか。本来、こうした子が社会の基盤をしっかりと支える労働者として機能することが大事であったが、その層が消えてなくなってしまったということだ。確かに、雇用状況も悪く、そうした人材育成がままにならなかったのはよく分かるが、そういうときこそ国や地方が施策として社会構造を維持し充実させることが必要だったと思う。
この空洞により、日本の特に製造業を中心にしたモノつくり産業における技術継承は大きく遅れたのではないだろうか。いまこそ、工業高校とか商業高校を復活させるか、大学でその役割を担うかすべきであると思う。格差社会のなかで中間層を埋める存在として、こうした技術、技能をもったひとたちを育て、評価することが非常に重要であると考える。
話をもとに戻すと、この技術伝承とITの関係を考える。ふつうには、やめていく人たちに頭の中にある知識、ノウハウを紙に書いて残してくださいと言うか、インタビューして聞き出してそれをドキュメント化するという方法がとられる。それで、出てきますかねえ。おそらく、そんなやりかただと限界があって、顕在化するのは一部で多くのノウハウは隠れたままになってしまうのではないだろうか。
さて、それをどうやって引き出していったらいいのだろうか。そこで強調したいのは、「ビジネスコンポーネント指向開発」がその答えであると言いたい。
いったいなぜ技術伝承に有効なのか。もう何度も言っているが、「ビジネスコンポーネント指向開発」では情報やデータの確定前のプロセスとその後のプロセスでは性格も違うし、作りも違ってくる。すなわち、確定前プロセスは不安定で不定形であり、一方確定後プロセスは安定で定型的である。そこで、経験やノウハウが発揮される、あるいは必要とされるのどちらかというと、前者のあいまいななかからみんなの知恵を出しながら固めていく作業プロセスであろう。
そうした、情報共有型の仕事の進め方は、そのメンバーにベテランの人を入れるようにして、ただし、そのひとがリーダシップを採るのではなく、若いひとが引っ張っていくようにし、ベテランのひとはアドバイザーとして位置させ、何か行き詰まったときや問題が生じたときなどに助言をもらいながら進めるイメージだ。
そうすれば、いろいろなケースを想像しながらノウハウを吐き出す作業とは違い、実際のビジネスの局面で意見を言ってもらうわけだから、非常に実務的だし、その場で若い人の教育にもなるという効果もある。また、そのベテランのコメントがカテゴライズされ、アーカイブされるから、あとで検索して活用も容易になるというものだ。
だから、繰り返すが単に聞き書きしてデータベース化するのもいいが、こうした実践の場で自然に経験やノウハウが引き出せる仕掛けが非常に効果的であると思う。


エロ小説家の戯言
眠れる大人