働きたくなるITを考える場合、ITの使い手であるひとりひとりのユーザが企業からどう見られているかが非常に重要な要素になる。旧来の労働者という概念では、歯車のひとつ、将棋の駒のイメージとなってしまうが、これからの企業ではそうではなくて「社員ひとりひとりの個性を尊重し、そしてひとりの消費者でもあると捉える」方向にいくように思う。
ここがEnterprise2.0の大きな変化であると考える。そうした個性を持ったユーザへ役に立つITを提供できるベンダーが生き残れるし、そうしたソフトウエアが普及していくだろう。
ここで、世の中で言っているEnterprise2.0について考えてみよう。リアルコムという会社は、特徴としてつぎの3つをあげています。
1. 集合知 ・・・Enterprise向けBlog、SNS、Wiki
2. エクスペリエンス ・・・GoogleのエクスペリエンスをEnterpriseに
3. マッシュアップ ・・・情報系のコアデータ統合管理基盤
1の集合知というのは、企業内においてBlog、SNS、Wiki等のコラボレーションツールを活用し、現場の集合知を収集し、ワークスタイルを変革しようといういものである。
2のエクスペリエンスというのは、ユーザが自宅でできることを会社でもできるようにということで、Webの世界でGoogleにより瞬時に欲しい情報が手に入るように、Enterpriseでも瞬時に欲しい情報が手に入ることが当然となってくるというもの。
また、システムの多様性・複雑性が増す一方でガバナンス要求が強化されつつあるEnterpriseにとって、3の「マッシュアップ」のような相互運用が可能なシステムアーキテクチャは理想的である。
とまあ、確かにこの3つの技術あるいはコンセプトは重要な特徴ではあるが、その中味については若干異論がある。なにか期待が大きすぎやしないだろうか、もう少し落ち着いて考えたほうがいいのではないだろうか。というのも、Web2.0はもともとは個人ベースでしかもネット好きのひとたちでもてはやされているわけで、それを企業内に持ち込んでも、最近はリテラシーがあがったといえどもまだまだ一部の先進的な企業をのぞいてはそう簡単に浸透しそうもない。
だからといって、あきらめろと言っているのではない。まずは、定常的な業務システムのなかにこうした要素を取り入れていったらどうかということだ。すなわち、これまでこのブログで述べてきたことを再度繰り返すようなことになるがお赦しを。
集合知で言えば、ワークスタイルを変革しましょうなんてことではなく、もともとそういうスタイルで仕事をしてきたのをWebの仕組みを使って効率的にやりましょうということです。「ユーザ目線のBPM」や「ビジネスコンポーネント指向開発」でもさんざん議論したように、情報やデータを確定させるための作業というのは、利害関係者間の情報共有的動作で進めていくわけで、そこでは参加者の知恵を出しながら決定していくことになる。まさに、集合知の世界である。
エクスペリエンスという意味では、Googleというより、Blogを書いている人やインターネットで買い物をしている人、mixiをやっているひととか、そういうネットに抵抗感のない人種がどんどん増えてきていることが大きい。まだ、年寄りには拒否反応を示すひとがいるが、だいぶ少数派になってきた。従って、高度なものは難しいにしてもブラウザや検索エンジンを使ってシステムにさわるぐらいはだいじょうぶそうだ。ある業務パッケージの会社のひとが売り込みにいくと、最近では、家で使っているBlogのようなシステムがなぜできないのかと問い詰められることが多くなったと言っていた。そういう時代になってきたのだ。
マッシュアップは、これもWebにあるサービスをもってきてすぐに企業に適用できるかというとこれもそう簡単ではない。だいいち、社員全員に使わすとなったら無理な話でしょう。ここでも、「ユーザ目線のBPM」と「ビジネスコンポーネント指向開発」で提案している、オープンCMSとBPMの組み合わせこそ、マッシュアップのひとつであると考えている。このオープンCMS(広義の意味の)により提供されるさまざまなサービスをつなぎ合わせて効率的で魅力ある業務プロセスを作ることこそ、Enterprise2.0的マッシュアップであるといえる。
要は、Enterprise2.0というのは、まず通常の業務システムのなかに少しずつWeb2.0の技術を入れ込んでユーザひとりひとりの使い勝手や効率的業務処理を支援することにあると考えている。