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ユーザ目線のBPM(5)

システムをデザインする

それでは、奥出直人の言う「デザイン思考による創造のプロセス」にもとづき、情報システムの開発について考えてみることにする。

「デザイン思考による創造のプロセス」とは、“社会的背景や哲学的背景を踏まえた上での考え方、作り手の問題意識を表わす哲学を考えるところから始めて、具体的に何を作りたいかビジョンを決め、それを持ってフィールドワークに行き、どのようなものを作るかコンセプト/モデルを作り、機能やインタラクションを検討しながら実際の設計デザインを行い、実証する。つぎにビジネスモデルを構築して、実際の運営方法を決定する”プロセスのことと言っている。

そのそれぞれのステップについて追いかけるが、より重要なプロセスとして上流のプロセスの最後であるデザインするところまでを取り上げる。

まず、ステップ1「哲学とビジョンを構築する」ことだが、企業の情報システムであれば、会社の経営理念や方針あるいはもう少し狭くて部門の運営方針といったものが哲学やビジョンに相当する。さらに、最近よく言われるEA(Enterprise Architecture)もこれにあたるものである。

ついで、ステップ2「技術の棚卸とフィールドワーク」は、従来の方法では、ビジョンからすぐにコンセプトへとつなげるが、ビジョンとコンセプトを明確に分け、この二つをつなぐ作業として位置づけられる。この考えが非常に重要である。

技術の棚卸しとは、アイデアや技術をたくさん集めて並べ、それをビジョンに割り振ってみるやり方であり、フィールドワークとは、ビジョンに基づき自分のビジョンを実現してくれるだろう「師匠」のところに出かけ、弟子入りし、みずからの経験を拡大していく、その記録を分析して「ワークモデル化」した段階で「魔法のシナリオ」と呼ばれるものを書く作業を行なう。「初心者であることは素晴らしい。それは自分の知らないことを知って、驚き、不思議に思う、その差分が価値を生むからだ」ということである。

これを、システム開発にあてはめてみると、いわゆる現場ヒアリングという行為に相当するかもしれない。しかし、いま実際にやられているのは単に現状業務の手順や問題点を聞いているだけで、ビジョンをきちんと確立してから行っているわけではないし、そもそもデザインするというマインドを持っていないと言える。ここは非常に重要なポイントで、ユーザニーズを聞くということももちろん大切だが、実現したいビジョンを頭の中に入れて、そのために現場のエキスパートをよく観察して分析する姿勢が肝要である。

ステップ3はいよいよ「コンセプト/モデルの構築」に入る。コンセプトというのは、アイデアをいくつか組合わせて、具体的にどのような技術でそれが可能になるかを検討していき、そこで生まれたビジョンを実現するための具体的な方法とその構造をいう。なおコンセプトには技術の裏打ちが絶対必要であることを忘れてはいけない。そのコンセプトを実現するための基本構造や仕組みを選んだり作りだしたりする作業を「モデル」を作るあるいは探すと呼ぶ。

そしてダーティプロトタイプあるいはラピッドプロトタイプと呼ばれる原初的なプロトタイプを作っていく。このあたりのやり方は、システム開発でいうプロトタイピング手法であるが、この場合はコンセプト形成はやってない場合が多く、しかもプロトタイプというとどちらかと言うと画面や帳票といったユーザインタフェースが中心で、システムの構造やプロセスの動きなどは分からないため、ここでいうステップの作業とはずいぶんと違う。

これからの開発で必要なのは、システム全体が見渡せるプロトタイプができる道具が要るということ、その道具は簡単に安く作れ、ラフなものからだんだん精巧なものへ進化させることができ、それを皆で議論しながらやっていける、そんなものが欲しいのだ。プロセスモデラーやシミュレーターみたなものが機能を追加すればこれにあてることができる可能性がある。

また、コンセプトの一部はEAから引用してくることができる。 このステップでおおかたのシステムの構造やプロセスの骨格が決まってくる。

上流プロセスの最後は、ステップ4「デザイン- デモンストレーション用プロトタイプをデザインする」である。デザインとは、機能を考えながら必要な要素を集め、構造や仕組みをつくっていく作業である。

これは、まさにコンポーネント開発に他ならないのではないでしょうか。そして、大事なのは、見えるもの(プロトタイプ)を早く作ってそれを見ながらデザインしていくということである。

こうしてみていくと、「デザイン思考」ということが、情報システムの開発にも適用できる、いやこうした思考方法が非常に重要であることがわかると思う。

なお、デザイン思考を活用するために使いこなすべき道具として、「経験の拡大」「プロトタイプ思考(build to think)」「コラボレーション」の3つを上げている。

この3つについて簡単に言えば、「経験の拡大」とは現場の人間の動きをよく観察せよということであり、「プロトタイプ思考」は見えるものを実際に作りながらスパイラルアップして行こうというものであり、同じ言葉が話せる精鋭による「コラボレーション」で作業することと理解できる。

今回は、「デザイン思考」によるシステム開発プロセスの有効性について書いたが、実際のワークモデルなどより具体的な手法の話まではここでは言及しない。なお、次回は、道具としてのBPMの可能性について考える。

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2007年03月03日 17:59に投稿されたエントリーのページです。

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