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ちょっといい話その4

昨日、「東京マラソン2007」があって、フルマラソンを走っている市民ランナーと優勝者へ月桂冠を渡す石原都知事をテレビで見ていたら、ふとあることを思い出した。

ぼくの高校の1年先輩に植松二郎という作家がいる。「ペンフレンド」で毎日児童小説最優秀賞を、「春陽のベリーロール」で織田作之助賞を受賞。そのほか「人びとの走路」という市民ランナーの話の本も上梓している。この人は、自身でもずっと走り続けていて、その体験をもとに「人びとの走路」を書いている。

植松さんはサッカー部の先輩で、以前にも書いたが、その昔関東高校サッカー大会に優勝したときのメンバーのひとりです。その植松さんがもうずいぶん前になるが、ある雑誌でそのときのエピソードを書いていて、その話が“ちょっといい話”なのだ。書いているのが作家だから素晴らしい名文で感動したことを覚えている。記憶をたどりながらその話とそれにまつわるいくつかのおもしろい話をする。

そのとき、サッカー部の顧問にI先生という、大先輩で何代も前の監督だった有名なひとがいた。話はその先生のことである。

大会では、一回戦を抽選勝ちするとあれよあれよと勝ち進み、決勝戦で見事東京代表の帝京高校を破って優勝してしまった。前に書いたが、そのあとの全国大会では、逆に一回戦で抽選負けだったのでほんのちょっとの差で結果がぜんぜん違うという両極端の経験をした。

さて、その大会は茨城県の水戸で一週間くらいで行われたが、I先生は日課として、試合が終わると夕食までの間、好きなパチンコをしに近くにでかけていく。1回戦で抽選勝ちした夜、「おい、やっぱりツイているぞ」と言って、景品のチョコレートをいっぱい持って帰ってこられる。生徒たちは、食べるのもうれしいのと同時に、ほんとについているらしいという気にもなってくる。2回戦、3回戦も同じようにしてチョコレートも持って帰ってくる。それをみていると明日もツキはこちらだという気分になってくる。それで優勝である。

ところが、大会から帰って、皆でいろいろな話をしているうちに、まてよ、先生が持ってきたチョコレートが入った紙袋は確かどこかの菓子屋の名前が入ったやつじゃなかったのかと気がつきだした。植松さんは、その真相を故I先生に聞く機会をもてなかったので本当はどうだったか分からないけど、そんなことはどうでもよくてツキを呼んでくれたチョコレートよありがとうと結んでいる。そんな、いい話を思いだして書いてみた。

ぼくもI先生語録を少し。実は石原慎太郎もサッカー部の大先輩でI先生は「石原慎太郎はへたくそでなあ、石を投げて指導した」というような話をされていた。だからぼくは、テレビで石原慎太郎の顔を見て、この話を思い出しニヤッとしている。

また、I先生は、英語の先生だったので、普通ぼくらは、いいシュートを打つと「ナイスシュート」と言いますが、そう言うと「違う、ナイスショットと言え」、過去形じゃないとダメなんです。そういう厳格さも持ち合わせていました。

最後にこれはけっこう今でも刷り込まれていることがある。よくゴールするとみんな抱き合って喜びますよね、ところが、大喜びしようものなら、「ばかもん、そんなことで喜ぶんじゃねえ」と一喝される。これには、どうも2つの意味があったのがわかった。ひとつは、点を入れるのが当たり前のような顔をしろ、そうすれば、相手をもっと威圧できるのだからということと、もうひとつは、相反するようなことかもしれないが、大喜びするのは相手に失礼だろうということだったと思う。勝者は敗者の前で謙虚であらねばならぬということなのです。

I先生はもう四半世紀まえに亡くなられているが、いまだに、ぼくが現役のとき怒られたことをきのうのことのように思い出す。

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2007年02月19日 11:44に投稿されたエントリーのページです。

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