一昨日ふと新聞の片隅にその日(12月15日)は力道山が死んだ日であるという記事を見つけた。それを読んだとき、あの頃のことがさっと浮かんできたのだ。力道山が死んだのは1963年だからぼくは中学生だった。学校の帰り道に誰かが、「おい、力道山が死んだぞ」と言いに来た。その一週間前に赤坂のキャバレーでやくざに刺されたのだが、力道山のことだからすぐに治ってしまうと信じていたからすごい驚きだった。あの力道山が刺されたくらいで死ぬわけがない、何かの間違いだとしばらく思っていた。だが、実際の死を確認すると、人間ってこんなにあっさり死んでしまうものかと子供心に深く残ったのだ。(あとでわかるが、ほんとうは麻酔医のミスで腹膜炎を併発したらしい)
また、この10月末に力道山の愛弟子であった大木金太郎が死んでいる。
そんなことがあったので、すぐにレンタルビデオ屋で「力道山」のDVDを借りてきて観る。この映画は、ソン・ヘソンという監督が作った韓国映画で、主演がソル・ギョングで脇を中谷美紀、藤竜也、萩原聖人などが固めている。
残念ながら感動しない映画であった。実在のヒーローを描くことの難しさが出ている。結局、多くの人はその主人公に対する見方がすでにあって、しかも皆それぞれで違った思いや評価があるわけで、何もないところにしみ込むような感激がないのである。従って、この手の映画は、時系列的な成功物語ではなく、どこか断片を切り取って、そこから一人の人間を描くといったほうがいいような気がする。
この韓国映画は、逆境にもめげず、強い中にも弱さがあり、だが夢を持ち続けるみたいな類型的な感じ。それで結局、体のいいヤクザ映画にしかならなかった。しかも、心理描写にしても細部の映像のつくりにしても粗雑なところがある。ちなみに、この映画のシーンに出てくるコブラツイストもラリアットもブレーンバスターもその当時はまだなかったのだ。ボデースラムと飛びけり、ヘッドロック、頭突き、逆えび固めぐらいなもんで、ルーテーズのバックドロップ(日本では岩石落としといった)を見たときはぶったまげたものだ。
とはいえ、ぼくにとってやっぱり力道山は英雄だ。